躁鬱 診断チェック|双極性障害の症状・原因・セルフチェック
双極障害は、かつて「躁鬱病(そううつびょう)」と呼ばれていた精神疾患です。気分が異常に高揚し活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込み何も手につかなくなる「うつ状態」という、対照的な二つの気分の波を周期的に繰り返すことが特徴です。これらの気分の波は、単なる感情の起伏とは異なり、その期間、強度、および日常生活への影響度において、病的な水準に達します。
躁鬱病の基本
双極性障害は、その病状の現れ方によって大きく二つのタイプに分けられます。
- 双極I型障害: 重度の躁状態と、それに続くうつ状態を経験します。躁状態は社会生活に著しい支障をきたすことが多く、入院が必要になるケースもあります。
- 双極II型障害: 躁状態ほど重度ではない「軽躁状態」と、うつ状態を繰り返します。軽躁状態は本人が「調子が良い」と感じ、周囲も気づきにくいことがあるため、診断が遅れるケースも少なくありません。
いずれのタイプも、うつ病と誤診されやすく、適切な治療が遅れると症状が慢性化したり、再発を繰り返したりするリスクが高まります。そのため、正確な診断が非常に重要となります。
双極性障害のメカニズム
双極性障害の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、脳内の神経伝達物質の異常が深く関与していると考えられています。特に、気分や感情の調節に関わるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった物質のバランスが、躁状態とうつ状態の間で変動することで症状が引き起こされるという説が有力です。
例えば、ドーパミンやノルアドレナリンの活動が過剰になると躁状態に、セロトニンなどの活動が低下するとうつ状態に陥りやすいとされています。また、脳の特定の部位、特に感情や意思決定を司る前頭前野や扁桃体などの機能異常も指摘されており、遺伝的要因や環境的ストレス要因と複雑に絡み合いながら発症すると考えられています。
躁鬱病の診断基準と症状
双極性障害の診断は、主に精神科医による詳細な問診と、アメリカ精神医学会が定めた「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」や世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類(ICD)」といった診断基準に基づいて行われます。重要なのは、躁状態、軽躁状態、うつ状態それぞれの症状を正確に把握することです。
躁状態の症状
躁状態は、気分が異常に高揚し、活動性が著しく亢進する状態です。最低1週間以上、ほとんど毎日、以下の症状のうち3つ以上(気分が易怒的な場合は4つ以上)が持続し、社会生活や職業機能に著しい支障をきたす場合に診断されます。
- 高揚した気分: 根拠なく自信に満ち溢れ、多幸感が続く。
- 易怒性: ささいなことで怒りっぽくなったり、興奮しやすくなったりする。
- 自尊心の肥大: 異常なほど自信過剰になり、偉大な能力や才能があると思い込む(誇大妄想)。
- 睡眠欲求の減少: 睡眠時間が極端に短くても疲労を感じず、平気でいられる。
- 多弁・話が止まらない: 普段よりも非常に多く話し、話すスピードも速い。
- 観念奔逸: 思考が次々と移り変わり、話の脈絡が飛び跳ねる。
- 注意散漫: 集中力が著しく低下し、気が散りやすい。
- 活動性の亢進: 目標指向性の活動が増加したり、精神運動性の焦燥感があったりする。
- 無謀な行動: 危険を顧みない衝動的な行動(衝動買い、無謀な投資、性的逸脱行為など)が増える。
躁状態のセルフチェック
以下の項目に当てはまるものがあるか確認してみましょう。これらは診断の目安であり、自己判断のツールではありません。
- 気分が異常に高揚し、何でもできるような万能感に満ち溢れていると感じますか?
- ほとんど眠らなくても、疲労を感じず元気に活動できていますか?
- 普段よりもおしゃべりになり、話が止まらないことが多いですか?
- 次から次へとアイデアが浮かび、思考がめまぐるしく動きますか?
- 衝動的に高価な買い物をしたり、無謀な投資をしたりすることが増えましたか?
- 普段ならしないような危険な行動や、無責任な行動をとることが増えましたか?
- ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりすることがありますか?
- 集中力がなく、気が散りやすいと感じますか?
- 性的な活動が増えたり、過度に社交的になったりしていますか?
躁状態の話し方の特徴
躁状態の人には、特有の話し方の特徴が見られます。
- 多弁で早口: 話す量が非常に多く、言葉が途切れることなく出てきます。聞いている側が相槌を打つ隙を与えないほどです。
- 観念奔逸: 話題が次々と変わり、脈絡が飛びます。一つのテーマについて深く掘り下げる前に、別の話題に移ってしまいます。
- 自信に満ちた口調: 自分の意見を強く主張し、反論を受け付けないような話し方になります。
- 割り込み・遮る: 他の人の話を途中で遮って、自分の話を始めたり、意見を割り込ませたりすることが増えます。
- 声の大きさ・抑揚: 声が大きく、抑揚が大きくなりがちです。
躁状態の身体的・精神的変化
躁状態は、精神的な変化だけでなく、身体にも影響を及ぼします。
- 睡眠欲求の減退: 数時間しか眠らなくても体が全く疲労を感じず、むしろ「眠る時間がもったいない」と感じるようになります。
- 活動量の著しい増加: 普段よりもはるかに多くの活動をこなそうとし、休むことなく動き続けることがあります。
- 食欲の変化: 食欲が増進することもあれば、活動に夢中になりすぎて食事を忘れてしまうこともあります。
- 体重の変化: 活動量が増えることで体重が減少することがあります。
- 集中力の低下: 多くのことに手を出してしまうため、一つのことに集中し続けることが難しくなります。
- 精神運動性焦燥: 落ち着きがなく、そわそわしたり、イライラして動き回ったりすることが精神運動焦燥です。
うつ状態の症状
うつ状態は、気分が著しく落ち込み、活動性が低下する状態です。最低2週間以上、ほとんど毎日、以下の症状のうち5つ以上(そのうち一つは抑うつ気分または興味・喜びの喪失であること)が持続し、社会生活や職業機能に著しい支障をきたす場合に診断されます。
- 抑うつ気分: ほとんど一日中、ほとんど毎日、気分が落ち込み、悲しい、空虚、絶望的な気分が続く。
- 興味・喜びの喪失: 普段楽しんでいた活動や趣味に対し、ほとんどすべてのことに興味や喜びを感じなくなる。
- 食欲・体重の変化: 食欲が著しく減少または増加し、それに伴い体重も減少または増加する。
- 睡眠障害: 不眠(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、早朝覚醒)または過眠(寝ても寝ても眠い、一日中寝ていたい)が見られる。
- 精神運動性の変化: 精神運動性の焦燥(落ち着かない、そわそわする)または精神運動性の制止(動きが遅い、話すのが遅い)が見られる。
- 疲労感・気力の減退: ほとんど毎日、エネルギーが低下し、疲れやすく、気力が湧かない。
- 無価値感・罪悪感: 自分に価値がないと感じたり、不適切な罪悪感を抱いたりする。
- 思考力・集中力の低下: 考えることや集中することが困難になり、決断力が鈍る。
- 希死念慮: 死について繰り返し考えたり、自殺を考えたり、自殺を企図したりする。
うつ状態のセルフチェック
以下の項目に当てはまるものがあるか確認してみましょう。これらは診断の目安であり、自己判断のツールではありません。
- ほとんど毎日、気分がひどく落ち込み、悲しい、空虚、絶望的な気分が続いていますか?
- これまで楽しかった趣味や活動に対して、全く興味や喜びを感じなくなりましたか?
- 食欲が大きく変化し、体重も増減しましたか?
- 夜眠れない、または寝すぎるといった睡眠の悩みが続いていますか?
- 体がだるく、疲れやすく、何をやるにも億劫に感じますか?
- 自分には価値がないと感じたり、自分を責めてばかりいますか?
- 物事を考えるのが難しくなったり、集中力が続かなくなったりしましたか?
- 死んでしまいたいと考えたり、自殺を考えたりしたことがありますか?
- 動きが遅くなったり、逆に落ち着きなくそわそわしたりすることが増えましたか?
うつ状態の話し方の特徴
うつ状態の人には、特有の話し方の特徴が見られます。
- 声が小さい・抑揚がない: 話す声が小さく、感情の抑揚が乏しくなることがあります。
- 無口・話すのが遅い: 以前に比べて話す量が減り、口数が少なくなります。話すスピードもゆっくりになることがあります。
- 返答に時間がかかる: 質問に対してすぐに答えられず、考えるのに時間がかかることがあります。
- ため息が多い: 会話中にため息が多くなることがあります。
- ネガティブな内容が多い: 話す内容が自分を責めるものや、悲観的なものに偏りがちです。
うつ状態の身体的・精神的変化
うつ状態は、精神的な変化だけでなく、身体にも影響を及ぼします。
- 強い倦怠感・疲労感: 理由なく体がだるく、重く感じ、活動する気力が失われます。
- 身体の痛み: 頭痛、肩こり、腰痛など、身体の様々な場所に痛みを訴えることがあります。
- 消化器系の問題: 便秘や下痢、胃の不快感など、消化器系の症状が見られることがあります。
- 自律神経の不調: 動悸、息苦しさ、めまい、発汗、手足の冷えなどが起こることがあります。
- 食欲不振・過食: 食事が喉を通らない、味がしないと感じて食欲が低下する、あるいはストレスから過食に走ることもあります。
- 体重の増減: 食欲の変化に伴い、体重が大きく変動することがあります。
- 性欲の減退: 性的な興味や欲求が著しく低下することがあります。
- 希死念慮: 死を考える、自殺を計画するといった深刻な精神状態になることがあります。
軽躁状態とは
軽躁状態は、躁状態と似た症状を示しますが、その程度はより軽度です。気分が高揚したり、活動的になったりすることは共通していますが、社会生活や職業機能に著しい支障をきたすほどではなく、入院が必要になることも通常ありません。
軽躁状態の主な特徴は以下の通りです。
- 持続期間: 最低4日間連続して、ほとんど毎日、気分が高揚または易怒的であり、活動性も高まっている状態が続く。
- 症状の重度: 躁状態の診断基準を満たすほど重症ではない。
- 社会生活への影響: 社会的、職業的機能に著しい障害を引き起こすことはない。むしろ、「調子が良い」「能力が上がった」と感じ、仕事の効率が上がるように見えることもあるため、周囲も本人も病的な状態だと認識しにくい。
- 入院の必要性: 入院が必要になることはない。
軽躁状態は、本人が「好調期」と捉えることが多いため、見過ごされやすく、後に続くうつ状態になって初めて医療機関を受診するケースが少なくありません。しかし、この軽躁状態の期間こそが、双極II型障害の重要な診断基準となります。軽躁状態を見逃さないことが、適切な診断と治療への第一歩となるのです。
躁鬱病(双極性障害)の診断プロセス
双極性障害の診断は、症状の複雑さや個人差が大きいため、非常に慎重に行われます。特に、単極性うつ病との鑑別が重要です。
精神科医による診断
精神科医による診断は、主に以下のプロセスを経て行われます。
- 詳細な問診:
- 現在の気分状態や症状だけでなく、過去の気分の波(躁状態やうつ状態の経験)、その持続期間、重症度、社会生活への影響などを詳しく尋ねます。
- 特に、躁状態や軽躁状態のエピソードがあったかどうかは、うつ病との鑑別において極めて重要です。本人が「調子が良かった」と感じていても、それが軽躁状態である場合があります。
- 気分変動のパターンや周期、きっかけとなる出来事なども聞き取ります。
- 家族や親しい友人からの情報も、客観的な視点を提供してくれるため、診断の助けになることがあります(本人の同意がある場合)。
- 睡眠パターン、食欲、活動量、思考内容、衝動性、自殺念慮の有無なども丁寧に確認します。
- 診断基準の照合:
- 収集した情報が、DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition)やICD-10/11(International Classification of Diseases)などの診断基準に合致するかを検討します。
- 双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害など、どのタイプに当てはまるかを判断します。
- 他の疾患の除外:
- 症状が、薬物の影響(ステロイドなど)、甲状腺機能異常、脳腫瘍などの身体疾患によって引き起こされていないかを確認するため、必要に応じて身体診察や検査を勧められることがあります。
双極性障害の診断は、一度の診察で確定することは稀であり、数ヶ月から数年にわたる経過観察が必要となる場合もあります。特に軽躁状態は見過ごされやすいため、慎重な判断が求められます。
診断に用いられる検査
双極性障害の診断において、特定の血液検査や画像診断だけで確定できるような検査は存在しません。しかし、以下の目的で補助的な検査が行われることがあります。
- 血液検査:
- 身体疾患の除外: 甲状腺機能亢進症や貧血など、気分変動を引き起こす可能性のある身体疾患を除外するために行われます。
- 薬物血中濃度測定: 治療薬(気分安定薬など)の血中濃度を測定し、適切な用量かどうかを確認するために行われます。
- 画像診断(MRI、CTなど):
- 脳疾患の除外: 脳腫瘍や脳血管障害など、気分症状と似た症状を引き起こす可能性のある脳の器質的疾患を除外するために行われることがあります。
- 心理検査:
- 補助的情報: 気分尺度の評価(例:ハミルトンうつ病評価尺度、ヤング躁病評価尺度)、パーソナリティ検査、認知機能検査などが、患者さんの状態を客観的に把握するための補助的な情報として用いられることがあります。これらは診断そのものよりも、症状の程度や合併症の有無、治療方針の決定に役立ちます。
誤診しやすい疾患
双極性障害は、その複雑な症状のため、他の精神疾患と誤診されることが少なくありません。特に以下の疾患との鑑別が重要です。
- 単極性うつ病:
- 最も多い誤診のケースです。双極性障害の患者さんは、うつ状態の期間が長いため、うつ病と診断されがちです。
- しかし、うつ病と誤診されて抗うつ薬単独で治療されると、躁転(躁状態に移行すること)を誘発したり、気分の波が不安定になったりするリスクがあります。
- 過去に軽躁状態や躁状態の経験があったかどうかを慎重に確認することが鑑別の鍵となります。
- ADHD(注意欠如・多動症):
- ADHDの症状(衝動性、多動性、不注意)が、躁状態や軽躁状態の症状と一部重なることがあります。
- しかし、ADHDは幼少期からの持続的な症状であるのに対し、双極性障害の躁状態はエピソード的に現れる点で異なります。
- 境界性パーソナリティ障害:
- 感情の不安定さや衝動性が見られる点で双極性障害と似ていますが、境界性パーソナリティ障害は、対人関係の不安定さ、自己像の混乱、慢性的な空虚感などが中心的な症状です。
- 気分の変動が、躁状態・うつ状態といったエピソード的でなく、より短期間で頻繁に起こる点が異なります。
- 統合失調症:
- 重度の躁状態では、幻覚や妄想といった精神病症状を伴うことがあり、統合失調症と誤診される可能性があります。
- 統合失調症は思考障害や幻覚・妄想が持続的であるのに対し、双極性障害の精神病症状は気分の波と連動して現れることが多いです。
- 物質誘発性精神病性障害:
- 薬物(覚せい剤、コカインなど)やアルコールの乱用によって、躁状態やうつ状態に似た精神症状が引き起こされることがあります。
- 薬物使用歴の確認が重要です。
これらの疾患との鑑別は専門的な知識と経験を要するため、疑わしい場合は必ず精神科医の診察を受けることが重要です。
躁鬱病(双極性障害)の原因
双極障害の発症は、単一の原因で説明できるものではなく、複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。主に「遺伝的要因」「環境的要因」「生物学的要因」の3つの側面から研究が進められています。
遺伝的要因
双極障害は、遺伝的な影響が大きい精神疾患の一つとして知られています。
- 家族歴: 血縁者に双極障害の人がいる場合、そうでない人に比べて発症リスクが高まります。特に、一親等(両親、兄弟姉妹、子供)に患者がいる場合、リスクはさらに高まります。
- 遺伝子: 特定の単一遺伝子によって発症するわけではありませんが、複数の遺伝子が複雑に作用し、発症しやすさに影響を与えていると考えられています。現在も、双極障害に関連する遺伝子の特定に向けた研究が進行中です。
- 遺伝の仕方: たとえ遺伝的な素因があっても、必ずしも発症するわけではありません。遺伝的な脆弱性を持つ人が、後述する環境的要因や生物学的要因と相互作用することで発症に至ると考えられています。
環境的要因
遺伝的素因を持つ人が、特定の環境要因にさらされることで双極障害が発症したり、症状が悪化したりすることがあります。
- ストレス:
- 精神的ストレス: 大切な人との離別、死別、失業、過労、人間関係のトラブルなど、強い精神的ストレスが発症の引き金となることがあります。
- 身体的ストレス: 身体的な病気、手術、出産などもストレスとなり得ます。
- ライフイベント: 引越し、転職、結婚、入学など、人生の大きな変化もストレス源となり、症状の誘因となることがあります。
- 睡眠リズムの乱れ: 不規則な生活、夜勤、時差のある旅行などによる睡眠不足や概日リズムの乱れは、気分の波を不安定にする大きな要因となります。
- 物質乱用: アルコールや薬物(特に覚せい剤などの興奮剤)の乱用は、脳内の神経伝達物質に影響を与え、躁状態やうつ状態を誘発したり、症状を悪化させたりするリスクを高めます。
- 季節変動: 季節の変わり目、特に冬から春にかけて躁転しやすかったり、秋から冬にかけてうつ状態になりやすかったりする人もいます。
生物学的要因
脳の機能や構造、神経化学的な側面からの要因も指摘されています。
- 神経伝達物質の異常: 前述の通り、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった脳内の神経伝達物質のバランスが、躁状態とうつ状態の間で変動することで症状が引き起こされると考えられています。
- 脳の構造と機能: 脳の特定領域(感情の制御に関わる前頭前野、記憶や情動に関わる扁桃体など)の構造や活動に異常が見られるという研究報告もあります。
- 炎症反応・酸化ストレス: 最近の研究では、身体の慢性的な炎症や酸化ストレスが、脳機能に影響を与え、精神疾患の発症に関与する可能性も指摘されています。
これらの要因は独立して作用するのではなく、互いに影響し合いながら双極障害の発症に関与していると考えられています。そのため、治療においては、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善やストレス管理も非常に重要となります。
躁鬱病(双極性障害)になりやすい性格
特定の性格特性が直接的に双極性障害を引き起こすわけではありませんが、一部の研究では、特定の性格傾向を持つ人が双極性障害を発症しやすい、あるいは症状の現れ方に関連するという指摘があります。これは、性格特性が発症の「リスク因子」となる可能性があるという視点です。
創造性との関連
双極障害の患者さんには、創造性や芸術的才能に恵まれた人が多いという説が長年提唱されてきました。
- アイデアの奔流: 軽躁状態や躁状態の時には、思考が加速し、次々と新しいアイデアが湧き出たり、エネルギーに満ち溢れて多様な活動に積極的に取り組んだりします。この「多産性」が、芸術家や科学者、起業家など、創造性を必要とする分野で優れた業績を上げることに繋がるという見方があります。
- 感情の豊かさ: 双極障害の人は、感情の起伏が大きく、喜怒哀楽が豊かである傾向があります。この感情の振幅が、芸術表現の深みや多様性に結びつく可能性も指摘されています。
- 著名人の例: 歴史上の著名な芸術家や作家、音楽家の中には、双極障害であったと推測される人物も多く、この説を裏付ける一因とされています。
しかし、全ての双極障害の人が創造性に優れているわけではなく、また、創造性が豊かな人が必ずしも双極障害を発症するわけではありません。あくまで相関関係が指摘されているに過ぎず、この関連性はまだ研究途上にあります。
ストレス耐性
特定の性格特性がストレスへの反応に影響し、それが双極障害の発症や再発に関連する可能性も指摘されています。
- 完璧主義・凝り性: 物事を完璧にこなそうとする傾向や、一度始めたことに没頭しすぎる凝り性の人は、目標達成のために無理をして睡眠時間を削ったり、過剰な活動に走ったりすることがあります。これが躁状態や軽躁状態を誘発する一因となる可能性が考えられます。
- こだわりが強い・頑固: 自分の考えややり方に強いこだわりを持つ人は、ストレス状況下で柔軟な対応が難しく、それが心身の負担となることがあります。
- 感受性が高い: 周囲の環境や他者の感情に敏感に反応する人は、ストレスをより強く感じやすく、それが気分の波に影響を与えることがあります。
これらの性格特性は、病気そのものではなく、双極障害の人が持つ傾向や、発症・悪化のリスクとなり得る要素として捉えるべきです。重要なのは、これらの特性を自覚し、自分に合ったストレス対処法を身につけたり、生活リズムを整えたりすることで、病気の管理に役立てることです。
躁鬱病(双極性障害)の周期
双極障害は、気分の波が特徴的な疾患であり、その波のパターン(周期)は人によって様々です。周期の長さや、躁状態とうつ状態のどちらが優位に出るかなども異なります。
躁転・うつ転のメカニズム
躁状態からうつ状態へ、またはうつ状態から躁状態へと切り替わることを「躁転(そうてん)」または「うつ転(うつてん)」と呼びます。この切り替わりのメカニズムは複雑で、単一の要因では説明できません。
- 神経伝達物質の変動: 脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)のバランスが大きく変動することが、気分の切り替わりに深く関与していると考えられています。躁状態では特定の神経伝達物質の活動が過剰になり、うつ状態では活動が低下するといった変化が起こると推測されています。
- 概日リズムの乱れ: 睡眠覚醒リズム(概日リズム)の乱れは、気分の波を不安定にする大きな要因です。不規則な睡眠や睡眠不足が躁転の引き金となることがよく知られています。
- ストレス反応: 強いストレスや大きなライフイベントが、気分の切り替わりのきっかけとなることがあります。特に、長期間のストレスが持続した後にうつ状態が深まったり、ストレスから解放された後に躁状態が現れたりすることがあります。
- 薬物の影響: 抗うつ薬を単独で使用した場合に、躁転を誘発するリスクが指摘されています。また、アルコールや薬物の乱用も、気分の不安定化に影響します。
躁鬱の切り替わりのきっかけ
気分の切り替わりには、明確なきっかけがある場合と、特に思い当たるきっかけなく生じる場合があります。
切り替わりのきっかけの例 | 説明 |
---|---|
大きなストレスイベント | 仕事での大きなプレッシャー、人間関係のトラブル、家族の病気や死別、経済的な問題など、精神的な負担が大きい出来事が誘因となることがあります。 |
生活リズムの大きな変化 | 不規則な睡眠時間、夜勤への移行、時差のある旅行、引っ越しなど、睡眠覚醒リズムが大きく乱れることで気分の波が誘発されることがあります。 |
薬物の使用・中止 | 抗うつ薬の単独使用による躁転リスク、ステロイドなど一部の薬剤が気分の不安定化を引き起こすことがあります。また、治療薬の自己判断による中止も危険です。 |
アルコールやカフェインの過剰摂取 | これらは脳内の神経伝達物質に影響を与え、気分の安定性を損なう可能性があります。特に躁状態では、過剰摂取に拍車がかかることがあります。 |
季節の変わり目 | 特に春先から夏にかけて躁転しやすく、秋から冬にかけてうつ状態になりやすい「季節性」のパターンを持つ患者さんもいます。 |
予兆としての身体症状や思考の変化 | 気分が切り替わる前に、不眠や過眠、食欲の変化、特定の思考(「もっと頑張れる」「何もできない」)が強まるなどの予兆が見られることがあります。 |
これらのきっかけを把握し、早期に兆候を察知できるようになることは、病気の管理において非常に重要です。心理教育や気分安定薬による治療を通じて、ご自身で気分の波をコントロールする力を養うことができます。
躁鬱病(双極性障害)のセルフチェック
双極障害は、気分が正常な範囲で変動しているだけだと思い込みやすく、自分では気づきにくい病気です。しかし、早期に発見し、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、安定した生活を送ることが可能になります。
症状チェックリスト
以下のチェックリストは、あくまで自己評価の目安であり、専門家による診断に代わるものではありません。気になる項目が多い場合は、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。過去に経験した症状も考慮してチェックしてください。
項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
躁状態/軽躁状態の症状 | ||
1. 気分が異常に高揚し、自信に満ち溢れ、万能感を感じたことがある。 | ||
2. ほとんど眠らなくても平気で、疲れを感じず活動できていた期間がある。 | ||
3. 普段よりもおしゃべりになり、話が止まらなくなったことがある。 | ||
4. アイデアが次々と湧き、思考がめまぐるしく動いた期間がある。 | ||
5. 衝動的に高価な買い物をしたり、無謀な投資をしたりしたことがある。 | ||
6. 普段ならしないような危険な行動や無責任な行動をとったことがある。 | ||
7. ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりすることが増えた。 | ||
8. 集中力が散漫になり、気が散りやすくなった期間がある。 | ||
9. 性的な活動が増えたり、過度に社交的になったりしたことがある。 | ||
うつ状態の症状 | ||
10. ほとんど毎日、気分がひどく落ち込み、悲しい、絶望的な気分が続く。 | ||
11. 以前楽しかったことに対し、全く興味や喜びを感じなくなった。 | ||
12. 食欲が大きく変化し、体重も大幅に増減したことがある。 | ||
13. 不眠(寝つきが悪い、早朝覚醒)または過眠(寝ても寝ても眠い)が続いている。 | ||
14. 体がだるく、疲れやすく、何をやるにも億劫に感じる。 | ||
15. 自分には価値がないと感じたり、自分を責めてばかりいる。 | ||
16. 物事を考えるのが難しくなったり、集中力が続かなくなった。 | ||
17. 死んでしまいたいと考えたり、自殺を考えたりしたことがある。 | ||
18. 動きが遅くなったり、逆に落ち着きなくそわそわしたりすることが増えた。 | ||
気分の波 | ||
19. 上記の躁状態(または軽躁状態)とうつ状態が交互に、または不規則に現れると感じる。 | ||
20. 気分の波によって、仕事や学校、人間関係に支障が出ていると感じる。 |
評価の目安:
「はい」の項目が多数ある場合(特に、躁状態/軽躁状態とうつ状態の両方の項目に「はい」がある場合)、双極性障害の可能性も考慮し、専門機関への相談を強くお勧めします。
特に、気分の波によって日常生活に支障が出ている場合は、早期の受診が重要です。
専門機関への相談
セルフチェックで当てはまる項目が多い、あるいはご自身の気分の波について不安を感じる場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談することが大切です。
相談先:
- 精神科・心療内科: 気分の問題や精神疾患を専門とする医療機関です。双極性障害の診断と治療の中心となります。
- 精神保健福祉センター: 各都道府県や指定都市に設置されており、精神的な健康に関する相談を受け付けています。専門のスタッフが、適切な医療機関や支援機関の情報提供、助言を行います。
- カウンセリング機関: 臨床心理士などが、悩みやストレスの相談に応じます。ただし、診断や薬の処方はできませんので、診断が必要な場合は医療機関への受診が必要です。
受診時のポイント:
- 正直に話す: 自分の症状や過去の気分の波について、正直に医師に伝えましょう。特に、躁状態や軽躁状態の経験は、うつ病との鑑別において非常に重要です。
- メモを活用する: 症状がいつから始まり、どのくらい続いたか、どんな行動をとったか、気分の波の周期などを記録した「気分安定化のための日誌」やメモを持っていくと、診断の助けになります。
- 家族の同伴: 可能であれば、あなたのことをよく知る家族や友人に同伴してもらうと、客観的な情報を提供してもらえます。
早期の診断と治療は、双極性障害の症状をコントロールし、再発を防ぎ、安定した生活を送るために不可欠です。躊躇せずに専門家のサポートを求めましょう。
躁鬱病(双極性障害)の治療法
双極障害は慢性的な経過をたどることが多く、再発しやすい病気ですが、適切な治療を継続することで症状を安定させ、日常生活を良好に送ることが可能です。治療の柱は、「薬物療法」「精神療法・心理教育」「生活習慣の改善」の3つです。
薬物療法
薬物療法は、双極障害の治療の中心となります。主に気分の波を安定させるための薬剤が用いられます。
- 気分安定薬:
- 炭酸リチウム: 双極障害の治療において、長年にわたり中心的な役割を果たしている薬です。躁状態とうつ状態の両方に効果があり、再発予防効果も高いとされています。しかし、治療域と中毒域が近いため、定期的な血液検査で血中濃度をモニタリングする必要があります。
- バルプロ酸: てんかん治療薬としても使用されますが、気分安定作用があり、躁状態の治療や再発予防に用いられます。肝機能障害や体重増加などの副作用に注意が必要です。
- ラモトリギン: うつ状態の改善やうつ状態への再発予防に特に有効とされています。重篤な皮膚症状(スティーブンス・ジョンソン症候群など)のリスクがあるため、少量からゆっくりと増量します。
- カルバマゼピン: てんかん治療薬としても使用され、躁状態や急速交代型(気分の波が頻繁に切り替わるタイプ)に有効な場合があります。
- 非定型抗精神病薬:
- オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどが躁状態の治療や再発予防に用いられます。セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスを整える作用があります。一部の薬はうつ状態にも効果を発揮します。
- 抗うつ薬:
- うつ状態の治療で用いられることがありますが、双極障害の場合、抗うつ薬単独の使用は躁転を誘発したり、気分の波を不安定にしたりするリスクがあるため、原則として気分安定薬と併用して、慎重に使用されます。短期間の使用にとどめることも多いです。
- 睡眠薬・抗不安薬:
- 不眠や強い不安症状がある場合に、一時的に使用されることがあります。依存性があるため、必要最小限の使用にとどめることが重要です。
薬物療法は、症状が安定しても自己判断で中止せず、医師の指示に従って継続することが再発予防のために極めて重要です。
精神療法・心理教育
薬物療法と並行して、精神療法や心理教育が行われます。これらは、病気への理解を深め、症状との付き合い方を学ぶ上で非常に役立ちます。
- 心理教育:
- 双極障害とはどのような病気か、症状の種類、原因、治療法、薬の役割、副作用などについて、患者さん自身とご家族が正しく理解することを目的とします。
- 病気を理解することで、早期に再発の兆候に気づき、対処できるようになります。
- 生活習慣の重要性やストレス管理の方法なども学びます。
- 認知行動療法(CBT):
- 気分や行動に影響を与える「考え方の偏り」に気づき、それを修正していくことで、症状の改善を目指します。
- 特にうつ状態の時のネガティブな思考パターンや、躁状態の時の衝動的な行動をコントロールするのに役立ちます。
- 対人関係・社会リズム療法(IPSRT):
- 対人関係の問題と生活リズムの乱れが、気分の波に影響することに着目した療法です。
- 規則正しい生活リズムを確立し、ストレスの多い対人関係への対処法を学ぶことで、気分の安定を図ります。
- 家族療法:
- 家族が病気を理解し、患者さんをサポートできるようになることを目指します。家族間のコミュニケーションを改善し、互いに協力し合える関係を築きます。
生活習慣の改善
規則正しい生活習慣は、薬物療法と同等に重要な治療の一部です。
- 規則正しい睡眠:
- 最も重要な点の一つです。毎日同じ時間に就寝・起床し、十分な睡眠時間を確保することで、概日リズムを整え、気分の波を安定させます。睡眠不足は躁転の大きな引き金となるため、特に注意が必要です。
- バランスの取れた食事:
- 規則的な食事は、血糖値の安定にも繋がり、心身の健康を保ちます。カフェインやアルコールの過剰摂取は、気分の不安定化を招く可能性があるため、控えめにすることが推奨されます。
- 適度な運動:
- 軽度から中等度の有酸素運動は、ストレス軽減効果があり、気分の安定に役立ちます。ただし、躁状態の時に無理な運動をすると、かえって活動性を亢進させてしまうこともあるため、体調に合わせて行いましょう。
- ストレス管理:
- ストレスは気分の波を誘発する大きな要因です。ストレスの原因を特定し、自分に合ったストレス対処法(リラクゼーション、趣味、休息など)を見つけることが重要です。
- 再発の兆候に気づく:
- 気分安定化のための日誌などを活用し、自身の気分の波、睡眠時間、活動量などを記録することで、再発の初期兆候に早く気づき、悪化する前に医師に相談できるようになります。
これらの治療法を総合的に組み合わせ、患者さん一人ひとりの状態に合わせて調整していくことが、双極性障害を管理し、安定した生活を送るための鍵となります。
躁鬱病(双極性障害)に関するよくある質問 (Q&A)
双極障害について、患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。
躁鬱病の初期症状は?
双極障害の初期症状は、非常に多様で個人差が大きいですが、多くの場合、うつ状態から始まることが多いとされています。しかし、単極性うつ病と異なる点は、後になって軽躁状態や躁状態のエピソードが判明することです。
よく見られる初期症状の兆候:
- 睡眠の変化: 不眠(寝つきが悪い、熟睡できない)が続く、あるいは逆に過眠(一日中眠い、寝過ぎる)になるなど、睡眠パターンが大きく変化する。これは、気分の波の初期サインとなることがあります。
- 気分の変動: 普段よりも気分が不安定で、ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだりする頻度が増える。
- 活動性の変化: 疲れやすい、何もする気が起きないといった活動性の低下(うつ状態の兆候)や、逆に根拠なく自信に満ち溢れ、多動になる(軽躁状態の兆候)が見られる。
- 思考の変化: ネガティブな考えが頭から離れない、集中力が続かない、決断できないといった思考の停滞や、反対に次々とアイデアが浮かび、思考が速くなるなどの変化。
- 周囲の指摘: 自分では気づかなくても、家族や友人から「最近、元気すぎるよ」「話が早すぎる」「眠れていないようだね」など、普段と違う言動を指摘されることがあります。特に軽躁状態では、本人が好調だと感じているため、周囲の指摘が重要な手がかりになります。
これらの兆候が続く場合は、専門医への相談を検討しましょう。
躁鬱病は治りますか?
双極障害は、「完治」という言葉で定義されるよりも、「症状をコントロールし、安定した状態を維持する」ことを目標とする病気です。慢性的な経過をたどることが多く、症状が安定しても再発しやすい特性があります。
しかし、これは悲観的なことではありません。適切な薬物療法を継続し、心理教育や生活習慣の改善を組み合わせることで、多くの患者さんが気分の波をコントロールし、社会生活を送り、充実した人生を送ることができています。
治療の継続が重要な理由:
- 再発予防: 治療を中断すると、再発のリスクが大幅に高まります。特に、症状が安定したからといって自己判断で薬を中止することは、最も危険な行為の一つです。
- 症状の重症化予防: 再発を繰り返すうちに、気分の波がより頻繁になったり(急速交代化)、重症化したりする可能性があります。
- 生活の質の維持: 症状が安定することで、仕事や学業、人間関係、趣味などを継続しやすくなり、生活の質が向上します。
双極障害は、糖尿病や高血圧のような慢性疾患に似ていると考えることができます。適切な治療と自己管理を続けることで、症状をコントロールし、安定した状態を保つことが可能です。
躁鬱病の家族歴は関係ありますか?
はい、双極障害には遺伝的要因が深く関わっていると考えられています。
- 遺伝的素因: 血縁者に双極障害の人がいる場合、そうでない人に比べて発症リスクが高まることが多くの研究で示されています。特に、一親等(両親、兄弟姉妹、子供)に患者さんがいる場合は、そのリスクはさらに高まります。
- 単一遺伝子病ではない: しかし、双極障害は特定の単一遺伝子の異常によって発症する病気ではありません。複数の遺伝子や、遺伝子と環境要因との複雑な相互作用によって発症すると考えられています。そのため、家族に双極障害の人がいるからといって、必ずしも自分も発症するわけではありません。
- リスク因子の一つ: 家族歴は、双極障害の発症リスクを高める「因子」の一つとして捉えるべきです。もし家族歴がある場合は、ご自身の気分の波や心身の変化に注意を払い、気になる症状があれば早めに専門医に相談することが大切です。早期発見・早期治療は、良好な経過をたどる上で非常に重要です。
躁鬱病の診断で精神科以外にかかるべき科は?
双極障害の診断と治療の中心は、精神科または心療内科です。しかし、症状が他の身体疾患によって引き起こされている可能性を除外するために、精神科医が他の専門科への受診を勧めることがあります。
精神科以外にかかるべき可能性がある科:
- 内科(特に内分泌内科):
- 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症は、気分変動(躁状態やうつ状態に似た症状)を引き起こす可能性があります。これらの疾患を除外するために、甲状腺ホルモンの検査などが行われることがあります。
- その他、副腎の病気なども気分に影響を与えることがあります。
- 脳神経内科:
- 脳腫瘍、脳血管障害、てんかんなど、脳の病気が精神症状を引き起こすことがあります。これらの可能性を除外するために、MRIやCTなどの画像診断が推奨されることがあります。
- かかりつけ医:
- 普段から通っているかかりつけ医に、まず相談してみるのも良いでしょう。かかりつけ医はあなたの健康状態を総合的に把握しているため、適切な専門科への紹介や、精神科への受診の橋渡しをしてくれることがあります。
ただし、これらの科はあくまで「除外診断」や「鑑別診断」のために受診するものであり、双極障害そのものの診断や治療は精神科医が行います。自己判断で他の科を受診するのではなく、まずは精神科医に相談し、必要に応じて紹介状を書いてもらうのが一般的な流れです。
【まとめ】躁鬱 診断は専門医へ!早期発見が鍵
躁鬱病、正式には双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を周期的に繰り返す精神疾患です。特に「軽躁状態」は本人も周囲も気づきにくく、「調子が良い」と見過ごされがちであるため、診断が遅れるケースも少なくありません。しかし、この軽躁状態こそが、単極性うつ病と双極性障害を区別する重要なポイントとなります。
この記事でご紹介したセルフチェックリストは、ご自身の気分の波や症状を客観的に見つめ直すための目安となります。もし、リストに当てはまる項目が多い場合や、気分の波によって日常生活に支障が出ていると感じる場合は、一人で抱え込まず、精神科や心療内科の専門医に相談することを強くお勧めします。
双極性障害の診断は、症状の詳しい問診を通じて慎重に行われ、他の病気との鑑別も重要です。早期に正確な診断を受けることで、適切な薬物療法や精神療法、生活習慣の改善に取り組み、症状を安定させ、再発を防ぐことが可能になります。
双極性障害は慢性的な経過をたどることが多いですが、適切な治療と自己管理を継続することで、多くの方が安定した生活を送っています。不安を感じたら、まずは専門家への一歩を踏み出しましょう。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。ご自身の症状について不安がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
コメントを残す